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「奇跡の自然」の守りかた: 三浦半島・小網代の谷から [本]


「奇跡の自然」の守りかた: 三浦半島・小網代の谷から (ちくまプリマー新書)

「奇跡の自然」の守りかた: 三浦半島・小網代の谷から (ちくまプリマー新書)

  • 作者: 岸 由二
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2016/05/09
  • メディア: 新書


 神奈川県三浦半島の先端、小網代の谷は、奇跡の自然だ。
 何が奇跡なのかというと、一つの流域、川が雨水を集める流れ始める源流から河口まで自然が残っていることである。

 たくさんの偶然が重なって、小網代の森の自然は残ったといってもいい。
 古くは水田があったところにゴルフ場の開発などが計画されながらも、開発が進捗せず長い時間に手付かずの自然となった。また、開発計画の途中でバブルが崩壊して積極的にゴルフ場開発ができなくなった。
 大規模な開発計画があったからこそ、住宅などが細分化されて建たずに、手付かずで放置されていたのである。

 また、バブル絶頂時のリゾート開発のときからも
、この貴重な自然を残していくのに、様々な議論が調整が繰り返されたのが読んでいてよく分かる。
 「ポラーノ村を考える会」「小網代の森を守る会」「小網代野外活動調整会議」など、それぞれの時期で、開発計画の主体であった京浜急行電鉄、市や県などに小網代の自然保護の大切さを伝え保護のため活動してきた。
 その活動の効果もあり、小網代の谷はついに保全地域となる。

 この自然保護の方法が面白い。
 自然に任せ人間の関わりを絶つわけではない。
 むしろ生物多様性を持つ理想的な湿地帯を保つため、ササを刈ったり川の流路を変えたりした。
 また木道を整備し、人が与える影響を最低限に抑えるようにした。

 人間が自然に手を入れることについて反対する外部の意見もあった。しかし放っておくと、湿原は乾燥していき、ササなど乾燥した陸地の植物が生え、生物相が変わっていってしまう。
 森や、川、湿原の動植物が多様性を持ったまま生きていける自然を、懸命に手を掛けて保っているのである。

 現在、小網代の谷はいくつかのルールを守れば誰でも無料で入ることができる。木道の上のみを歩く、動植物を採集しないなど、ごく当たり前のことである。
 いつか小網代の谷に行きたいと思う。そして、心ゆくまで動植物を観察したい。